招き猫ミュージアムができるまで

●その2〜浅間石の仁王猫〜


 

 1月11日に降った雪の中に立つ仁王猫。右手指先の角度、目の周りを磨く、耳をもう少しはっきりさせると、完成。しかし、これでは作業出来ないので、明かりつきの門柱石を削ることにする。いままで、寒い中でも、なんとか天候に恵まれてきたが、今回は、足下が悪い。(作家・今井廉さん)


「招き猫ミュージアム」は、「風呂猫スタジオ」という猫専門のアートスタジオの一部を使って公開予定です。300坪の敷地には、天明の大噴火で飛んできたという巨岩が3つ、ゴロリと横たわり、住居を兼ねたスタジオがそのあいだを縫うように細長く建っています。岩はごつごつと粗い肌を見せる火山岩で、噴火から100年以上の歳月を経て、クルミや松、山桜などの木が岩の割れ目から生え、枝を伸ばしています。  東京からこの地への移転を決意させたのは、この奇怪な岩のたたずまいと山桜でした。ちなみに、群馬県嬬恋村は有名なジャズバー「サムライ」のオーナー・宮崎二健氏の出身地で、この土地は宮崎氏の小学校時代の親友からお借りしています。親類縁者のひとりもいない嬬恋に、エイヤッとやって来られたのも招き猫のご縁と感謝しております。

 さて、滋賀県にアトリエを構える石の彫刻家・今井廉さんから「庭づくりをやらせてもらえませんか」というおたよりをいただいたのは一昨年、98年秋のことでした。今井さんは、石にこだわり続け、ぬくもりのある作品を作られる方。敷地内には、これまで集めてきた石やコンクリの招き猫を置いていましたが、もっとここの自然や建物の雰囲気にあった庭を作りたい、という思いがあったので、是非にとお願いすることになりました。

 はるばる訪ねてこられた今井さんは、ふだん作品に使う御影石とはまったく異なる質感の浅間石に興味をそそられたようでした。浅間石は地元でもコンクリで固めて別荘の門柱に使うくらいで、用途は限られています。大噴火の際には溶岩流で集落が壊滅した土地ですから、ちょっと地面を掘り返すとゴロゴロと出てくる厄介者でもあるのです。

 しかし、今井さんは浅間石こそ、この風景に溶け込みながら静かな存在感をたたえる作品になりうる、と考えたのでした。地元の工務店や石屋さんに、なかば呆れられながらの石探しが始まりました。メインになる「仁王猫」の石は、隣の畑との境に埋もれていたものを許可を得て掘り出して使うことになりました。

 石の作品作りには時間がかかります。大きくて重たいものを動かすだけで、大変な手間です。クレーンなどは使わずに、奥さまと今井さんふたりの人力と知恵で解決していくのです。もろく砕けやすいなど、素材特有の癖にも苦労は多いようです。99年春以来、滋賀から通われては約一週間ずつ滞在されることすでに5回。その度に少しずつかたちになっていく作品や作家の取り組みを目の当たりにすることは、とても貴重で贅沢な体験だと感じています。今はうっすらと雪をかぶった「仁王猫」も完成まであと一歩ということです。

 

*「仁王猫」などの制作については、今井廉さんのHP(http://www.biwa.ne.jp/~stone/Pages/luckycat.html)にも紹介されています。是非ご覧ください。

(文:日本招猫倶楽部世話役 荒川千尋 2000.2.6)


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