招き猫とご利益の話
一匹二匹と集まってきて、とうとう食器棚を占領してしまった我が家の招き猫たち。しかも、
ここにいるのは小さいやつだけで、本棚や電子レンジの上などにも別の招き猫が鎮座している。
招き猫のススメ
自分流に楽しめる縁起物の王様、招き猫の世界にようこそ
- 招き猫は庶民派の縁起物
街を歩けば必ず店先のショーウインドーや棚の上でちょこんと座っている招き猫は、もっとも親しみやすい縁起物と言えるでしょう。神社仏閣で授与されたり観光地のお土産屋さんに並んでいたりする他、瀬戸物屋さんとか最近ではファンシーショップなどでも売っているのを見かけるようになりました。1個200円ぐらいのミニ招き猫などもあって、価格的にも手に入れやすいのも魅力です。一匹だけ飾ったり沢山コレクションしたり、眺めて楽しくてご利益もある(?)身近な縁起物です。
- 招き猫は万能インテリア
町中で注意して見ていると、招き猫は老舗商店から最先端のコンピュータ屋さんの店先まで、ほんとうにいろんなところで飾られています。神棚にまつるもよし、テレビの上に鎮座させるもよし、はたまた床の間に飾ってもよし。招き猫はどこに置いてもマッチする不思議な置物です。
- アートとしても楽しめる招き猫
トラッドな招き猫以外にも、多くの現代作家の手によってさまざまな新しい招き猫作品が製作されています。広告の意匠として使われることも多いし、招き猫には創作モチーフとしても魅力もあるようです。中には相当高価なものもありますが、比較的手に入れやすい値段のものが多いようです。これらの作品は招き猫展などで展示公開されたりしていますが、個性豊かな招き猫たちは、眺めるだけでも楽しいものです。
- *店先でお客さんを招いてる招き猫を見ると、つい「がんばってね」と声をかけてしまいたくなってしまいます。我が家でも買ってきた宝くじを踏んでもらったり、いいことがあったらお礼に座布団を作ってあげたり。招き猫にはそういった他の縁起物にはない、なごめる魅力があると思います。
招き猫の由来
ここでは代表的な招き猫エピソードのいくつかをご紹介します
- 豪徳寺の招き猫の話
江戸時代はじめのこと、彦根藩のお殿様、井伊直孝が鷹狩りの帰りにある貧乏なお寺の前を通りかかると、門の向こうから猫がしきりに手招きしていました。不思議に思って猫について境内に入った時、突然門前にカミナリが落ちて、直孝は命拾いしました。猫に命を救われた直孝はこのお寺を井伊家の菩提寺とし、名前も豪徳寺なってたいそう立派になりました。この猫は今も観音様の化身として招福殿にまつられています。この姿に似せた招き猫を大事にすると、ご利益があると言われるようになりました。
- 江戸中期の遊女、薄雲の話
元禄の頃江戸は吉原に薄雲という有名な遊女がいました。薄雲太夫は飼っていた猫と一緒に道中するほどの猫好きで、この猫のために友禅で布団を作ったり首に紫色のちりめんで金の鈴をつけてあげたりしてかわいがっていました。猫は薄雲の行く先々についていって、いつでもじっと薄雲をみまもっていました。しかし回りの者にはこの様子が猫に妖怪が乗り移っているようにしかみえず、気味悪がられていましたが、あるときとうとうこの猫は首をはねられてしまいました。ところが、猫の首は力尽きる前に薄雲を狙っていた毒蛇をかみ殺して、主人を助けました。薄雲はたいそう悲しみましたが、これを不憫に思った日本橋の大店の主人が、長崎から取り寄せた伽羅の銘木でこの猫の木像を作って薄雲に贈りました。この猫の模造品を浅草の「年の市」で売りだしたところ飛ぶように売れて、これが招き猫の始まりとも言われるようになりました。
- 江戸時代末期、丸〆猫の話
嘉永年間、猫をかわいがっていた貧しい老婆が、貧乏のあまりついに飼えなくなってしまいました。しかたなく猫に生活がいよいよ苦しいことを言い聞かせて手放したところ、その夜老婆の夢の中に猫が現れ、自分の姿を今戸焼きにして裏に丸〆(まるしめ)の印をつけて売れと教えてくれました。果たしてその通りにすると、丸〆猫は縁起物として評判になり売れに売れたそうです。これが招き猫の原形と言われていますが、現在の今戸焼の招き猫には丸〆マークはついていません。
- 七世紀の中国の書物、「酉陽雑俎」
中国の書物「酉陽雑俎」(ゆうようざっそ、著者段成式は863年没)後集巻八の、「俗ニ言フ、猫面ヲ洗ッテ、耳ヲ過レバ、則客至ル」(猫が顔を洗うとき耳の後ろまで洗うと、お客さんが来ると俗に言われている)が招き猫の大元の由来ともいわれています。日本では耳の後ろを洗うと雨が降ると言います(湿度が高くて耳の後ろがかゆいからで、けっこう当たります)が、雨が降ってくるからお客さんが家の中に入ってくるということかもしません。
- *他にも、やはり江戸時代の寛政年間に、客寄せにそれぞれ金と銀の招き猫をおいた通称「金猫」「銀猫」という遊女屋があったこととか、江戸城を作った太田道潅が戦いに敗れて敗走するときに逃げ道を教えた猫の話とかがあります。だけどこういった話を知らなくても、形をみただけでなんとなくご利益が分かっちゃうところが、招き猫のすごいところです。招き猫が全国的に普及したのは第二次世界大戦のあと、お皿さえ売れなくなった状況で居酒屋向けの縁起物として作ってみたものが大当たりしたからだそうですが、そのへんに理由がありそうです。
招き猫のご利益鑑定法
招き猫の効能とかご利益にはローカルルールもあるようですが、一般的にはこんな感じです
- 右手と左手
招き猫は手をあげていますが右手がお金を、左手がお客を招くと言われています。
また、右手がオス、左手がメス猫だそうです。海外向けの招き猫は手のひらが逆を向いていて、持っている小判はドルマークです。両手挙げは降参のポーズとして避けられていましたが、ここ何年かでお金も人もという欲張りな両手挙げ招き猫が登場してきました。
- 手の長さ
耳の高さより長い手を持つ招き猫は「手長」と呼ばれて、福をより沢山集められるとされています。手が長いものを作るのは、技術的にも難しい上に運送中に壊れやすかったりもするようです。
- 体の色
スタンダードなのはミケ猫(白猫)で福を招いてくれます。黒は魔除けまたは商売繁盛、赤は病気除け金は文字通りお金を呼ぶといわれています。最近は黒猫の人気が上がっているそうですが、ピンクは恋愛といったようなカラフルな新色も登場してご利益の幅は広がるばかりです。
- ご利益の有効期間
一説によると、2年で新しい招き猫に取り換えるといいと言われているようですが、これは多分に「経営戦略」(?)的なものでしょう。長く一緒に暮らしているとどうにも愛着が沸いてしまいますから、その時はあらたに新しい仲間を加えてあげたいものです。
- *ある窯元の職人さんによると、「『右手』がどうのとか招き猫についてあれやこれや言われだしたのは、ここ10年ぐらいのこと」だそうです。どの招き猫たちもちゃんとさまざまな福を呼んでくれますから、そのへんのルールにはあまりこだわりすぎなくてもいいでしょう。
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